次の10年、世界中が盛り上がるIoT
ECHONET IoT MASTERで新しい暮らしを実現しよう

株式会社東芝
株式会社東芝 研究開発センター 情報通信プラットフォーム研究所 所長
エコーネットコンソーシアム代表理事 斉藤 健 様

1989年に(株)東芝に入社。総合研究所に所属し、インターネット技術の応用研究を担当。以来、家電事業部、社会インフラ事業部なども経験し、白物家電、住宅設備、AV家電、エネルギー機器(スマートメーター)などのインターネット化に従事。現在は、研究開発センターの情報通信プラットフォーム研究所所長、そしてエコーネットコンソーシアム代表理事として、ECHONET LiteやECHONET Lite Web APIを中心としたIoT技術の開発と普及活動を行っている。

株式会社 東芝

東芝は、太陽光や水力、地熱発電といった再エネ分野で高い技術力と実績があり、脱炭素化(カーボンニュートラル)を実現するための事業に力を入れている。また、人々の暮らしを豊かにするべく、IoT分野の研究開発や国が推進する「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けた取り組みを行っている。

エコーネットコンソーシアム

エコーネットコンソーシアムは、スマートハウスの家電や住宅設備をつなぐ通信規格「ECHONET Lite」や、インターネット上の通信規格「ECHONET Lite Web API」を推進する団体。大手家電メーカーや大手電力会社をはじめ、住宅、IT企業、大学の研究機関などが参加し、国際標準規格の「ECHONET Lite」に対応した機器の製品化支援や、スマートハウスの普及に力を入れている。その他、豊かで持続可能な社会「Society 5.0」、およびSDGsの実現に貢献するためのビジョン「ECHONET 2.0」なども推し進めている。

INTERVIEW

電気代の高騰や環境問題への危機意識から、エネルギー節約に対する意識が世界中で高まっている。こうした問題を解決する技術として期待されているのが、家電などのありとあらゆる電気機器同士がインターネットで繋がる「IoT」だ。今回は、エコーネットコンソーシアムの代表理事を務める 斉藤健様に、これからIoT技術を学ぶ意義と、IoT技術が導く未来について、お話を伺った。

地球環境から健康、
生活利便性の向上まで
あらゆる課題を解決したい

エコーネットコンソーシアムについて教えてください。

私たちエコーネットコンソーシアムは、家電や住宅設備機器が相互に連携するための通信規格「ECHONET Lite(エコーネットライト)」や、インターネット上の通信規格「ECHONET Lite Web API」を推進する団体です。ECHONET Liteは、IoT社会の実現に欠かせないものであり、そのIoT技術によって環境問題から人々の健康まで、生活に関するあらゆる課題を解決したい、という想いを起点として活動を行っています。

生活に関する課題について、詳しく教えていただけますでしょうか。

たとえば環境問題です。これまで人類は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やすことで、エネルギーを作り出してきました。その結果、CO2が増えて地球温暖化が進み、異常気象や生態系の変化といった環境問題が深刻化しています。その対策として世界各国が掲げた宣言が、脱炭素化(カーボンニュートラル)です。日本でも、2050年までにCO2の排出量を実質ゼロにすべくさまざまな取り組みが行われています。

また、地方を中心に、少子高齢化や過疎化、人口減少などが進行しています。これらの社会課題をデジタル技術によって解決し、誰もが便利で快適に暮らせる社会を実現するために政府が推進しているのが「デジタル田園都市国家構想」です。この国家構想では、国民一人ひとりが地理的な制約、年齢、性別、障害の有無等に関わりなく、便利で快適な暮らしを実現することを目標としています。

そして、「脱炭素化」「デジタル田園都市国家構想」に欠かせない技術が、IoTです。私たちエコーネットコンソーシアムは、今の日本、そして世界が目指している社会を実現するための取り組みをいち早く行ってきました。私たちが普及拡大に努めているECHONET Liteは、すべての家電/住宅設備メーカーが共通して使用できる通信規格、言うなれば家電/住宅設備同士をネットワークで繋げるための共通ルールであり、IoT社会の実現に欠かせないものなのです。

より良い暮らしを実現するための
IoTの活用事例

脱炭素化(カーボンニュートラル)や地球環境問題の解決に、IoT技術はどのような貢献ができるのでしょうか。

脱炭素のためには、太陽光や風力、水力、地熱といった再生可能エネルギーによる発電が欠かせませんが、安定供給に課題があります。たとえば、太陽光発電で雲が出てきたり、風力発電で風が止んでしまうと、発電量が下がってしまい節電する必要が出てきます。ここで活躍するのがIoTの技術です。電機機器と発電設備がIoTによってつながることで、自然やインフラの状況に合わせて、地域全体でエネルギーの使い方を調整することができるようになります。

エネルギーの供給方法も、IoTにより、遠くにある大型の発電所から、身近にある小型な発電システムへと変化が始まっています。

従来は、火力発電や水力発電のダム施設など、大型の発電所が生み出した電気を変電所で変電して、各家庭に配電していました。しかしこの供給方法では、台風や地震といった自然災害による大規模停電が発生しやすく、エネルギーの安定供給へのリスクが大きいという課題がありました。

そこで登場したのが、「分散型電源システム」です。分散型電源には、電気を使用する「需要家」の近くに作った小規模な発電設備を含みます。たとえば太陽光発電で発電した電力を、発電設備の所有者や設置場所の近辺で消費する、というシステムです。近くで発電した電気を近隣でのみ消費するため、大規模停電は起きにくくなります。

私が勤めている東芝では、IoTを活用した分散型電源システムに力を入れています。一つひとつは離れた場所にある小型の蓄電池やEV機器を100台、1000台とIoT技術で繋いで遠隔制御することで、それらのエネルギー機器がお互いに補完しあい、ひとつの発電所のように機能します。スマートメーターなどを使い、電力の需給予測の精度を高め、分散電源システムと連携させることで電力の安定供給へとつなげ、エネルギー危機から脱炭素社会への貢献まで期待できます。

IoTは、健康面など、人々の生活においてどのようなメリットがあるのでしょうか。

IoT技術によって繋がるものは、各家庭や店舗・工場などの中小ビルから大型のビルまで、あらゆるものが対象となります。そのため、私たちが暮らす住宅設備や家電製品をネットワークでつなぐことができれば、電力消費量を可視化したり制御することができ、省エネを実現できます。

また、空調エアコン、給湯器、体重計などをネットワークで繋ぐことにより、生活状況のデータをスマホアプリで見ることができれば、遠方に住む家族の安全面や、一人ひとりの健康状態の確認、管理も行うことができるようになります。IoT技術が普及することで、私たちの生活がより便利になることはもちろん、さまざまな社会問題の解決に繋げられます。

家電や住宅設備をつなぐための
IoT技術
「ECHONET Lite」を学ぶ
メリットは?

IoT機器は、私たちの生活にどのくらい浸透し始めているのでしょうか。

家電や住宅設備をつなぐためのIoT技術。それがエコーネットコンソーシアムが作ったECHONET Liteです。日本国内はもちろん、国際標準規格としても認定を受けています。

そのECHONET Liteを搭載した機器の累計出荷台数は、2022年に1億3,000万台を超えました。たとえば、電気の使用量を把握し、通信回線で遠隔に通知することができる電力計のスマートメーターは、日本のほとんどの家庭に普及しました。そして2025年からは、次世代スマートメーターの設置が全世帯で始まります。この動きは電力のDX推進とも言われ、再生エネルギー、脱炭素化に向けて次世代スマートメーターから得る情報の有効活用が期待されています。

IoTの知識を持つ人材の需要はこれから高まっていくことが予想されますが、IoT人材は、どのような業界で活躍することができそうでしょうか。

このように、ECHONET Liteに対応した機器が普及することで、IoT社会が実現するための基盤が整いつつあります。この流れは、家電業界とか建築業界に止まることなく、むしろ多くの業界や新しいビジネスへと広がっていくでしょう。IoT機器で収集したデータを、省エネや脱炭素のためにどう生かすのか、セキュリティや健康管理といった人々の生活サービスにどう生かすことが出来るのか、といったアイデア合戦がビジネスの場で繰り広げられていくのではないでしょうか。

いろいろなアイデアを出し合って多種多様なアプリケーションを作り、皆さんをより健康にしましょう、より良い日本にしていきましょう、ということが、シンプルながらとても大事な考え方だと思っています。ここが、インターネット上で様々なアプリケーションを記述し、様々な宅内や施設内のデータを利活用できる通信規格「ECHONET Lite Web API」の出番です。エコーネットコンソーシアムとしてもさらに新しい仕組みを作り出そうと、多くのプロジェクトが動いてます。

IoTによる生活の変化は、もう目前に来ていると言えます。ある特定の業界というよりは、あらゆる業界でIoTの知識が必要になります。もちろんこれからも課題は出てくるでしょうが、私たちの生活に直結するテーマだからこそ、チャレンジしがいのある分野です。

ECHONET Liteを正しく学べるのは
インターネット・アカデミーのECHONET IoTマスター制度

IoTスキルを証明することができる資格「ECHONET IoT MASTER」の魅力をぜひ教えてください。

家電や住宅設備をつなぐためのIoT技術であるECHONET Liteや、ECHONET Lite Web APIを習得するためのカリキュラムが、インターネット・アカデミーの「ECHONET IoTマスター制度」です。このカリキュラムを受講し、認定試験に合格することで、「ECHONET IoT MASTER」の資格を取得することができます。この資格を取得することで、ECHONET Liteの正確な知識やスキルを持っている、ということを証明できます。

たとえば、私が勤めている東芝では、ECHONET Lite Web APIによるIoTの開発に力を入れています。主にエネルギー分野、クラウド分野、もしくはインターネット上のサービスを構築する場面において、各設備をどのように監視・制御するか、あるいはどのようにデータを見える化するかを考えたりします。IoTに詳しく、使いこなすスキルがある人は重宝されますから、働くうえで大きなメリットになります。

また、この認定資格を持っている人であれば、エコーネットコンソーシアムが提供する実験用クラウド「ECHONET Lite Web API実験クラウド」を利用することができ、さらに理解を深めたり、動作検証を行うこともできます。私たちの生活を豊かにする、新しいWebサービスやアプリ開発に実験クラウドを活用していただければと考えています。

資格取得を目指す方々、IoTをこれから学んでいこうとする方々に一言お願いします。

ネットワークに繋がった家電や住宅設備が私たちの生活にとって当たり前になる時代が、次の10年で到来します。まさにこのタイミングでモノとネットワークをつないでハードウェアの設計や開発に関われるということは、ものすごくエキサイティングですし、新しいセキュリティについて考える仕事も大変な誇りになるでしょう。

これからはモノを売るだけでなく、モノとモノをつなぎ、それらを活用していろいろなサービスを運用する人材が求められる時代です。「モノをつなぐ」ところはエコーネットコンソーシアムにお任せください。皆様には、人々のIoTへの期待を受け止めて、ECHONET IoT MASTERを取得して新しいアイデアを実現していただきたいです。お客様も喜び、システムを作った人も喜び、そして地球にも優しいという三方良しの世界を作れるのが ECHONET IoT MASTER の醍醐味。資格取得を起点としてECHONET Liteのスキルを活かして、私たちとともに新しい世界を作ることに一緒にチャレンジしていきましょう。