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2018.03.18
スタートアップの成長を描く「デジタルデザイン/クリエイティヴのワークプロセス」

スタートアップの成長を描く「デジタルデザイン/クリエイティヴのワークプロセス」

インターネット・アカデミーでは、2月27日(火)に「スタートアップの成長を描く デジタルデザイン/クリエイティヴのワークプロセス」をテーマにしたセミナーを開催。スタートアップにおいてデザイナーを初めとしたクリエイターファーストでの動きが強まるなか、クリエイティヴ業界で大活躍し、特にスタートアップに関わりコンサルティングを行う3社をゲストにお招きしました。

ここでは講演内容の一部をご紹介します。

セッション1スタートアップにおけるブランディングのプロセス

最初のセッションでは、スタートアップのブランディングをテーマに株式会社パークの田村大輔氏より講演していただきました。

スタートアップの特徴

AbemaTV立ち上げ期の開発フロー

スタートアップのブランディングに携わって感じることのひとつは、大企業や中小企業とは仕事の作法が大きく異なっていることです。たとえば、ファーストコンタクトが電話やメールではなくTwitterで来たりするなど、問合せのチャネルから違っています。

また、仕事を進めるうえでの熱量や意思決定の速さなどは圧倒的で、そこがスタートアップの大きな強みになっています。一方で、仕事が超属人的になっていたり、開発者目線が強い反面、サービスを使う側の視点に目が届いておらず、魅力が伝わりにくくなりがちという課題も存在しています。

ブランディングの軸

運用フェーズでのUIデザイナーの仕事

ブランディングという言葉は自分の家畜を識別するための焼き印(brand)が語源となっています。つまり、その企業やサービスがオリジナルな立ち位置を確立することで「区別する」ということが本質にあります。

スタートアップのブランディングをするうえで、田村氏が軸に据えているのが「コトバから作る」ということです。まずは、会社のミッションや行動指針などのミッション・バリューや、そのサービスがどんな価値を提供するのかといったタグラインなどをきちんと組み立てていきます。

これを行うことで、「自分たちはなぜビジネスをしているのか」といった自己理解が深まる、会社が目指すものを踏まえてサービスをつくることができる、スタッフの意思統一や行動指針ができるなどの軸ができあがります。

そのうえでロゴデザインしたりサービスを作っていくことで、一貫性のあるサービスの提供やマーケティング活動におけるコミュニケーションが実現できるようになります。

社員を巻き込む重要性

ブランディングに携わる際に大切なのは「一緒に汗をかくこと」だと田村氏は語ります。

ブランディングは本来、外部の人が音頭を取ってすすめるのは好ましくありません。あくまで社員を巻き込んで進めていき「自分たちがブランディングをしたんだ」と社員の人たちが思えなければなりません。そのため、たとえばワークショップを行う中で「スピード」という言葉が出てきたのであれば、「この会社にとってのスピードとは何?」といったように深堀してディスカッションしていき、自分事化していくことが大切です。

コトバというものは目に見えにくい成果物なので、価値を感じにくい側面があります。しかし、これがあるかどうかで今後の事業戦略や、それが成功するかどうかが変わってきます。そのため、スタートアップこそ、コトバにこだわり、粘っていくことが大切です。

講演者

株式会社パーク
代表取締役/コピーライター
田村大輔 氏

2004年よりコピーライター廣澤康正氏に師事。面白法人カヤック、オレンジ・アンド・パートナーズを経て、2015年クリエイティブ・エージェンシー株式会社パークを設立。「愛はあるか?」を理念に、企業やサービスのブランディングに携わる。株式会社パーク

セッション2プロダクト開発とデザイナーに求められる役割

次のセッションでは、デジタルプロダクトの開発プロセスとデザイナーに求められる役割をテーマに株式会社オハコの菊地涼太氏に講演していただきました。

デジタルプロダクトに軸足をおいたデザイナー

AbemaTV立ち上げ期の開発フロー

まず、ここでのデザイナーとは「デジタルプロダクトに軸足をおいたデザイナー」を表します。

IT企業において、プロデューサーやディレクターが企画や設計を考え、デザイナーはそれをもとに手を動かすというケースが多くありました。これまではプロデューサーやディレクターが考える粒度でデジタルプロダクトを形にできていました。しかし、これからの時代はユーザー体験を踏まえたデザインや実装が必要になるため、デザイナーの役割や仕事の範囲も変わってきています。

プロダクト開発の現状

運用フェーズでのUIデザイナーの仕事

現在、プロダクト開発の現場は、ビジネスモデルの複雑化や、Webサービスやモバイルアプリでビジネスをするプレイヤーの圧倒的増加といった課題に悩まされています。そうした環境でプロダクトが生き残っていくためには、デザイナーやエンジニアが自発的にユーザー体験を考えたプロダクト開発に携わっていく必要があります。

しかし、デザイナーやエンジニアは、プロダクトマネージャーが想像しているほどプロダクトについて理解をしていません。一方でプロダクトマネージャーは、デザイナーやエンジニアが想像しているほど技術的な知識を持っていないため、役割によって持っている情報や認識に差異が生じているというのが現状です。

OHAKOではプロダクトマネジメントツール「proris」を開発しています。このツールはプロダクトマネージャのアイデアを可視化するという独自の価値を備えており、プロダクト開発を円滑に進められるようになります。

開発現場におけるデザイナーの役割

これまでの開発現場では、マネージャーが作るものを決めてチームが手を動かすといったケースがほとんどでしたが、これからはユーザーに価値を届けるためにチームも自ら考えていくという姿勢が求められるようになります。

そうした中でデザイナーに求められる役割も変わってきます。たとえば、プロダクトマネージャーのインタビューに同行しユーザーのインサイトを知る、ビジネスモデルを素早く理解しプロトタイプをつくる、UI設計やビジュアルデザインを機敏に行い、チーム全体のスピードを落とさないようにするといった動きが必要です。

ただデザインをするだけではなく、UIUXに関わることはすべてデザイナーも行うことになります。これはとても大変なことですが、偉大なアイデアをもった起業家とともにサービスを立ち上げたという経験はとても貴重で成長につながります。

最近では、一口に「デザイナー」と言っても、UIデザイナーもいれば、経営戦略に深くかかわっていくデザイナーもいます。「どんなデザイナーになりたいのか?」を自問していくことが大切だと思います。

講演者

株式会社オハコ
代表取締役社長CEO/菊地 涼太 氏

慶應義塾大学SFC在学中となる2012年12月に株式会社オハコを設立し、現職。デジタルプロダクトのUXデザインを軸に事業会社のサービススタートアップをサポートするクライアントワークをメインに事業展開。株式会社オハコ

セッション3新規事業におけるデザインワークフロー

最後のセッションでは、新規事業の立ち上げにデザイナーがどう関われるのかをテーマに株式会社DONGURIの吉田直記氏に講演していただきました。

DONGURIのワークフローにおけるデザイナーの役割

AbemaTV立ち上げ期の開発フロー

DONGURIでは、ビジネスコンサルティングからCI(コーポレート・アイデンティティ)やVI(ビジュアル・アイデンティティ)を業務プロセス化しており一連のワークフローとして運用しています。

このワークフローのなかでデザイナーの役割は、CIやUXを設計し各ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションができるようにすることです。今回はこのワークフローに基づいて、AGA(男性型脱毛症)治療の新規事業立ち上げの事例を紹介します。

設計から開発までの流れ

運用フェーズでのUIデザイナーの仕事

この案件では新規事業立ち上げに必要な、ビジネスシナリオからタッチポイントの開発までを担当しました。まず、ブリーフィングではクライアントの要望や、市場での現状の立ち位置、サービスの特徴などを把握しました。

そのうえで、AGAに関連性がありそうな人からのヒアリングや統計データなどの資料を活用してユーザーの悩みや要望を調査。今回のケースでは、AGAへの対策状況によって、ユーザータイプを6つに分割し、そこからコアターゲットを選定していきました。

コアターゲットを軸に、SEOやリスティング広告などの流入経路や、クリニックのメインサイトやランディングページといったタッチポイントの設定を行います。ここでは、ユーザーのニーズとサービス特性を加味し、ビジョンやミッション、ユーザーに提供できる価値などをわかりやすく言語化しブランドメッセージを確立していきました。

それをもとに、ロゴマークのデザイン、カラーやタイポグラフィの定義などを行い、メインビジュアルの開発を行っていきます。こうした視覚表現の設計をしたのちに、ワイヤーフレームなどの情報設計や、クリニックのサイトやランディングページ、動画、店舗の設計といったタッチポイント開発を行っていきました。

ビジネス設計ができるデザイナーのニーズ

リリース後は、AGA認知者を対象にサイト評価を実地しました。その結果、情報量やデザイン、サービス内容のわかりやすさなどは好意的な意見が多く、サービスを使いたいかどうかという利用意向についても高い評価を得ることができました。

また、KPIとして設定していた予約件数についても一定の成果が出ており、現在は課題となっていた点の改善や、アフィリエイトなどの施策もスタートさせて効果検証を行っている段階です。

こうした新規事業の立ち上げにデザイナーが関わることで、ビジネスの要件を満たしながら最終的なタッチポイントを設計することができるため、ユーザー体験を最大化することができます。こうしたビジネス設計ができるデザイナーは戦略から成果物までのシナリオを創造する力があるため、こうした人材はさらに需要が増えていくのではないかと思います。

講演者

株式会社DONGURI
シニアアートディレクター 吉田直記 氏

東京造形大学卒業後に広告プロダクションを経てDONGURIにジョイン。事業戦略と連携したCI設計を行い、事業会社のサービス開発や、プロモーションを行う。

株式会社DONGURI

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