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生成AIと著作権|「入力」と「出力」でリスクは異なる

生成AIと著作権 |「入力」と「出力」でリスクは異なる

生成AIを業務で使う中で、次のような不安を感じたことはないでしょうか。
「この文章、どこかの記事に似ていないだろうか」
「社内資料を貼り付けたけれど、大丈夫だっただろうか」
この2つは、同じ「生成AIのリスク」という言葉でくくられがちですが、実は別の問題です。

前者は「出力」のリスク、後者は「入力」のリスクです。原因も、対策も、確認すべき相手も異なります。

この記事では、生成AIのリスクを「入力」と「出力」に分けて整理します。そのうえで、著作権について文化庁が示している判断の枠組みと、社内ルールに書くべき項目をお伝えします。

AIちゃん
AIちゃん

生成AIを使っていくなかで、何に気をつけたらいいのかな。

有村先生

まず「入力」と「出力」を分けて考えてみましょう。
一緒にすると混乱するかもしれませんが、分けてしまえば「気をつけるポイント」がわかりやすくなります。

目次

AIリスクと法務の記事一覧

リスクは「入力」と「出力」に分かれる

生成AIのリスクを一つの言葉で語ると、対策が立てにくいかもしれません。まず、「入力」「出力」の2つに分けてみましょう。

生成AIのリスクは入力と出力で性質が違う
【図1】生成AIのリスクは入力と出力で性質が違う

【表1】入力のリスクと出力のリスク

入力のリスク 出力のリスク
何が問題か 渡してはいけない情報を渡してしまう 出てきたものに問題がある
守る対象 自社や顧客の情報 他人の権利、情報の正確さ
確認する相手 利用しているサービスの規約と設定 出力された内容そのもの
影響範囲 情報漏えい、契約違反 権利侵害、誤情報の拡散
対策の性質 事前に決めておく 毎回確認する

一番最後の「対策の性質」が、実務上いちばん重要です。入力のリスクはルールで防げますが、出力のリスクは都度確認することで防ぐ必要があります。

入力のリスク:何を入れてはいけないのか

設定によって扱いが変わる

生成AIに入力した内容が、サービス改善のために利用される場合があります。この扱いは、プランや設定によって異なります。

無料プランや個人向けプランでは利用される設定(デフォルト)になっていることがあり、法人向けプランでは利用されない設計になっているのが一般的です。ただし規約は各社で異なり、変更されることもあります。

業務で使う前に、利用しているサービスの規約と設定を確認してください。

入れる前に立ち止まるべき情報

【表2】入力の前に確認したい情報

種類 例 判断のポイント
個人情報 氏名、連絡先、顧客名簿 本人の同意なく外部に渡していないか
顧客から預かった情報 提供資料、打ち合わせの記録 契約で第三者提供が禁じられていないか
自社の機密情報 未公開の計画、技術情報、価格 社外に出たときの影響を想像できるか
他社の著作物 購入した資料、記事の全文 利用が認められた範囲を超えていないか

判断に迷ったときの基準は一つです。「社外の人にメールで送れるか」と考えてみてください。もし送れない情報なら、入力を避けるべきです。

会議の録音を扱うとき

議事録作成でAIを使う場合、参加者の同意が必要になることがあります。とくに、顧客との打ち合わせが含まれる場合は注意してください。

社内に利用ルールがある場合は従いましょう。ルールがない場合は、上長に確認したうえで使用するのが安全です。

出力のリスク:著作権はどう判断されるのか

ここからは「著作権はどう判断されるのか」の話です。判断の枠組みを知っておくと、必要以上に恐れることも、軽く考えることもなくなります。

文化庁が「2つの段階」に分けて整理している

文化庁は2024年3月、文化審議会著作権分科会の法制度小委員会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」を公表しています。生成AIと著作権をめぐる判例の蓄積がない状況を踏まえ、現行の著作権法がどう適用されるかを整理したものです。

この資料では、「AIの開発・学習段階」と「生成・利用段階」を分けて考える枠組みが示されています。

著作権が問題になる2つの段階
【図2】著作権が問題になる2つの段階 ※文化庁「AIと著作権に関する考え方について」をもとに作成

【表3】2つの段階と、主な論点

段階 誰が関わるか 主な論点
開発・学習段階 AIを開発する事業者 著作権法第30条の4に定める、著作物を享受する目的以外での利用にあたるかどうか
生成・利用段階 AIを使う私たち 生成物が既存の著作物に類似しているか
既存の著作物に依拠しているか

業務でAIを使う立場の人が向き合うのは、「生成・利用段階」です。

「類似性」と「依拠性」という2つの”ものさし”

生成・利用段階では、類似性と依拠性という2つの観点が問題になると整理されています。

  • 類似性:生成されたものが、既存の著作物とどれだけ似ているか
  • 依拠性:既存の著作物をもとにして作られたといえるか

この考え方自体は、生成AIに限ったものではありません。
人が文章や絵を作る場合にも用いられてきた判断の枠組みです。

つまり、AIを使ったから特別に厳しくなるわけでも、緩くなるわけでもないということです。

実務でできること

判断の枠組みを知ったうえで、実際にできることは限られています。だからこそ、次の3つを習慣にしてみましょう。

【表4】出力を使う前の確認 3つ

確認すること 具体的な方法
①似すぎていないか 特徴的な表現やフレーズを検索して、既存のものと重ならないか見る
②特定の作品を指示・指定していないか 「〇〇風に」「〇〇のような」という指示・指定は、依拠を疑われやすくなる
③そのまま使用していないか 自分の言葉に直し、内容をよく確認したうえで使う

②はとくに見落とされがちです。特定の作品や作者を名指しして似せるよう指示することは、避けたほうが安全です。

文化庁はチェックリストも公表している

文化庁は2024年7月、「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表しています。開発者・利用者・権利者といった立場ごとに、望ましいと考えられる取り組みが整理されています。

社内ルールを作る際の土台として使えるため、ぜひ原典を確認してみましょう。

AIが作ったものに著作権はあるのか

「AIが作ったものに著作権はあるのか?」
これもよく耳にする論点ですが、単純に「ある」「ない」とは言い切れません。

著作権が認められるには、人が自分で考えて、工夫して作ったといえることが必要とされています。AIに指示を出すだけの部分が多いほど、この「人の工夫」が入る余地は小さくなります。

たとえるなら、次の2つのケースは、同じ「AIを使って作った」でも中身がまったく違います。

【表5】人の関わり方が違う2つのケース

ケースA ケースB
作り方 AIに一言指示を出し、出てきた文章や画像をそのまま使う 何度も指示を出し直し、いくつも案を出させて選び、組み合わせたり書き直したりする
人の工夫 小さい 大きい

ケースA・ケースBを、同じ「AIが作ったもの」として一律に扱うことはできない、というのが現在の整理の方向です。
「ここから先は工夫があったといえる」という明確な線が引かれているわけではないためです。

実務上の意味:商用利用を考えるとき

生成AIによる生成物を商用利用する場合、自社で作ったコンテンツに著作権が認められない可能性があるということは、他社に模倣されても権利を主張しにくい場合があるということでもあります。社外に出す重要な制作物については、人が関与した記録を残しておくことが、後に役立つかもしれません。

著作権以外に注意すべきこと

リスクは著作権だけではありません。むしろ日常の業務で頻繁に向き合うのは、出てきた内容をそのまま信じてよいかという問題です。

AIちゃん
AIちゃん

生成AIの答えが間違っていることって、そんなにあるのかな?

有村先生

はい、あります。
もっともらしい文章で出てくるので、気づきにくいのが厄介なところです。とくに数字、日付、固有名詞は要注意です。今後も確認の工程はなくせません。

【表6】著作権以外の主なリスク

リスク 何が起きるか 対策
事実と異なる内容
(ハルシネーション)
実在しない情報がもっともらしく出力される 数字・日付・固有名詞は必ず出典で確認する
一次情報を確認する
偏った内容 学習データの偏りが出力に反映される 複数の視点で見直す
個人情報の混入 出力に個人を特定できる情報が含まれる 公開前に確認する
商標・意匠 生成物が他社の商標等に触れる 社名やロゴを生成させる場合は、既存の商標と重なっていないか調査する

最も頻度が高いのは1つ目

日常業務で最も起きやすいのは、事実と異なる内容の出力です。

これは不具合ではなく、言葉のつながりやすさから文章を作るというAIの仕組みに由来するものです。AIの性能が上がれば、誤る確率は下がりますが、決してゼロにはなりません。

法制度はどう動いているか

生成AIをめぐる制度は、いま動いている最中です。最新の状況は、必ず公的機関の発表を確認してください。

日本ではAIに関する法律が施行されている

2025年、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(通称:AI法)が成立しました。同年6月4日に公布・一部施行され、9月1日に全面施行されています。

総務省の「令和8年版 情報通信白書」でも、この法律の制定を背景に、官民を挙げたAIの開発・活用の取り組みが進んでいることが示されています。その後、この法律にもとづくAI基本計画が2025年12月に閣議決定されるなど、制度の整備は現在も進んでいます。

情報は必ず原典で確認する

制度に関する情報は、解説記事だけで判断しないでください。内容が更新されていたり、記事の公開時点での状況が反映されていなかったりすることがあります。

【表7】確認すべき「一次情報」

分野 確認先
著作権 文化庁「AIと著作権について」
個人情報 個人情報保護委員会
AI政策全般 内閣府、総務省、経済産業省
事業者向けの指針 経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン」

社内ガイドラインに明記すべきこと

ツールを導入しただけでは、使ってよい範囲は現場に伝わりませんので、文書にして示す必要があります。

とはいえ、いきなり網羅的なものを作ろうとすると完成しません。次の6項目から始めてみてください。

社内ガイドラインに書く6項目
【図3】社内ガイドラインに書く6項目

【表8】ガイドラインの最低限の項目

分類 項目 書く内容
入力 入れてよい情報 公開情報、社内の一般的な文書など
入力 入れてはいけない情報 個人情報、顧客提供資料、未公開の情報など
入力 使ってよいサービス 会社が契約・許可しているものを明示する
出力 確認の手順 数字・固有名詞・出典の確認を誰が行うか
出力 社外に出す前の承認 誰の承認を得るかを決める
出力 問題が起きたときの連絡先 気づいた人がすぐ相談できる窓口

「禁止」だけのルールにしない

ありがちな失敗は、禁止事項だけを並べてしまうことです。

何がだめかだけを書くと、現場は「よくわからないから使わない」という判断をします。結果として、ルールを作ったことで活用が止まるという本末転倒が起きるかもしれません。

「これは使ってよい」を先に書いておきましょう。使ってよい範囲が明確なら、安心して使えます。

ルールを作って終わりにしない

制度もサービスも変わります。見直す時期をあらかじめ決めておくことも重要です。3か月から半年に一度が目安です。

おわりに

生成AIのリスクは、漠然と恐れても、無視しても、うまくいきません。まずは入力と出力に分けて考えることが出発点です。

あらためて、要点を整理します。

  • リスクは「入力」と「出力」に分かれ、守る対象も対策も異なる。
  • 入力は事前のルールで防ぐ。出力は毎回の確認で防ぐ。
  • 著作権について、文化庁は「開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分けた考え方を示している。
  • 利用者が向き合うのは生成・利用段階であり、類似性と依拠性が論点となる。
  • ガイドラインは禁止事項だけでなく、使ってよい範囲を先に書く。

なお、個別の案件が法的に問題ないかどうかは、事情によって判断が変わります。
判断に迷う場合や、重要な判断を伴う場合は、弁護士など専門家にご相談ください。この記事は、考え方の枠組みを整理することを目的としています。

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