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AI(人工知能)とは?古代神話から最新のAIまで歴史を徹底解説!

  • 2022/11/12
AI(人工知能)とは?古代神話から最新のAIまで徹底解説!

2000年代に入ってからAI(人工知能)開発の功績が著しく、最近ではニュースなどでよく耳にしますよね。AIというと、近年の大きな功績ばかり注目されがちですが、実はその土台となった研究や理論はもっと昔からありました。もっとも古くはなんと、古代ギリシア神話にまで遡ります。 今回は「そもそもAI(人工知能)って何なのかよくわからない」といった方のためにAIの基本的な知識をご紹介したいと思います。またそれに加えて、現代のAIを語るうえで欠かせない重要な古代からの功績も「AIの歴史」としてまとめましたので是非ご覧ください

目次

AIの活用の身近な例

AIに関するニュースやテレビ番組はたくさんありますが、Google社が開発したAIアシスタントを日常的に使用されている方も多いのではないでしょうか。

検索エンジンでおなじみのGoogleでは、「OK Google」と呼びかけるだけでAIが高速でWebを検索し、結果を表示してくれます。ハンズフリー検索に加え、Googleが提供するスマートフォンスピーカー「Google Home」やスマートフォンの「Google Pixel」など、GoogleのAIアシスタントがあらかじめ内蔵されたデバイスを利用し連携することで、音声のみでデバイスを操作することができます。

このように、GoogleのAIアシスタントは、音声認識によるりUX(ユーザ体験)の向上に寄与しています。018年には「Google Duplex」が話題を呼んだことも記憶に新しいですが、近年、このような音声アシスタントをはじめとして、様々な分野でAI技術が進歩しています。

AI(人工知能)とは

AI(人工知能)とは、"Artificial Intelligence"の頭文字です。"Artificial Intelligence"という言葉はアメリカ合衆国の計算機科学者、認知科学者であるジョン・マッカーシーが1956年の「ダートマス会議」で初めて使用した言葉であり、彼のホームページでは次のように定義されています。

It is the science and engineering of making intelligent machines, especially intelligent computer programs.

Professor John McCarthyのホームページ「What is AI? / Basic Questions」より

「それは知能を持った機械、特に知能を持ったコンピュータプログラムを作る科学や工学である」

ここで言う知能とは人間の知的能力を指します。すなわち本来人間が行っている活動や作業を行うために必要な知能を、人間のものに似せてコンピュータ上に再現することを指します。これまでコンピュータには人間と同じように考え、学習することが求められてきました。私たちの身近なところにも少しずつ応用されてきており、音声認識や翻訳といった自然言語処理や、画像認識をはじめとしたさまざまな分野で研究が進められています。

機械学習(マシーンラーニング)とは

機械学習(マシーンラーニング)とは

コンピュータがAIとして推測を行うために必要になるのが「学習」です。AI自身も人間が行っているのと同じように、知識や経験を通して推測に必要な判断材料を手に入れなければなりません。集めたデータから規則性や表現方法、指標を導き出して次の問題を解くためのアルゴリズムを構築します。このデータの学習方法のことを機械学習(マシーンラーニング)といいます。

機械学習(マシーンラーニング)は大きく「教師あり学習」、「教師なし学習」、「強化学習」の3つの類型に分けることができます。次にこれらの違いを1つずつご紹介します。

教師あり学習とは?

「教師あり学習」とは機械に問題と答えを同時に提示するという、まるで教師が生徒に問題の解き方を教えるかのような方法のことです。問題に対して答えがはっきりと定まっている場合はこの方法で機械学習をさせるのが効率的です。

例えば「人の顔」を機械に学習させたい場合は、「人」の顔写真と「これは人の顔である」という答えを同時に分析させます。単に「人の顔」といっても個人によって千差万別ですが、機械はこうした情報を何万枚、何百万枚と分析するうちに特徴をつかみ、「どうしてこの写真が人の顔に分類されるのか」ということを学習していきます。このようにして問題と答えを同時に分析させて問題解決の精度を高めていく方法を「教師あり学習」といいます。

教師なし学習とは?

問題は与えられているが、答えは与えられていないという場合の学習方法のことを「教師なし学習」といいます。この場合はいわば答えを教えてくれる先生がいないため、機械に大量のデータを読み込ませて分析、分類、推測、新たな発見をさせるのに適しています。

法則性のわかっていない無数のデータの特徴を明らかにする「データマイニング」においてはこの「教師なし学習」がよく用いられます。「データマイニング」とは膨大なデータの集合の中からそれまで明らかにされていなかった情報、とりわけ有用な情報を取り出す技術のことです。データ解析の際には統計学やパターン認識などの知識も活用されます。 また、はじめは「教師あり学習」で学習させてある程度傾向をつかんだら「教師なし学習」に移行し膨大なデータを分析させる機械学習の方法として「半教師あり学習」があります。

強化学習とは?

「強化学習」とは報酬を最大化するために機械自身が試行錯誤をする学習方法のことです。この学習方法も問題のみが与えられて答えが与えられていない、すなわち教師はいない、という点から考えると一種の「教師なし学習」といえます。ただし「教師なし学習」と違うところは単にデータを分類したり推測したりするのではなく、機械自身がより良い結果が出るように試行錯誤を繰り返すというところです。囲碁や将棋などのゲームで高得点を出したり、アームで物を器用につかんだりするような複雑で高度なことを機械に行わせるためには機械自身に試行錯誤させる方法が有効なのです。

試行を繰り返す中で最終的な効果を最大化するように機械を導くために必要になるのが「報酬」です。はじめは無意味な作業を繰り返していても、偶然「報酬」を与えられるような状況になった場合、機械は「こうすれば報酬がもらえるかも」というヒントをつかむことになります。こうした過程を繰り返すことで徐々にその精度は上がっていき、最終的には人間を凌駕するほど力をつける場合もあるのです。囲碁の世界チャンピオンを破って一躍有名になったコンピュータ囲碁プログラムAlpha Goも「強化学習」によってあれほど強くなることができました。

ディープラーニング(深層学習)とは

ディープラーニング(深層学習)とは

近年AIが話題を集めていることのほとんどが、このディープラーニング(深層学習)のおかげといっても過言ではありません。
ディープラーニング(深層学習)とは、先ほど紹介した「機械学習」の手法の一つであり、人間が行うような画像や音声の認識、予測、分類、記述を行えるようにコンピュータが自ら学習するというものです。2006年にその手法が提唱されて以来AI(人工知能)の研究を飛躍的に発展させてきました。ニューラルネットワーク(人間や動物の脳の神経回路をモデルとして、問題解決をするように設計されたアルゴリズム)は20世紀半ばから研究されてきた分野でしたが、ディープラーニングが登場するまではデータ量の不足やネットワークを多層構造化するための技術的な問題のために大きな進歩はありませんでした。しかし2006年に提唱された新たな手法によって多層ニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク)を用いた機械学習が可能になりました。

この機械学習ではアルゴリズム全体がより深く(ディープに)なったことで、より多くの情報伝達と情報処理が可能になり、結果として汎用性や精度が飛躍的に向上しました。また、近年の通信技術の発達やデジタル機器の普及によって機械の学習に欠かせない大量のデータ(ビッグデータ)が容易に集められるようになったこともディープラーニングの高度化と普及に寄与しました。

ディープラーニング(深層学習)の応用例は?

2010年ごろから急速に進歩したディープラーニングを応用して非常に高性能の技術が数多く開発されてきました。囲碁の話で出てきたAlpha Goもその一例です。ここではそのほかに大まかに「音声認識」、「画像認識」、「自然言語処理」の3つをご紹介します。

音声認識

「音声認識」とはコンピュータに音声(人間の声)を認識させて、その特徴を捉えて個人を識別したり、テキストに書き起こしたりしてもらうための技術です。学問だけではなくビジネスの分野でも人間が話すスピーチのパターンや発話パターンを認識するためにディープラーニングの技術が活用されています。GoogleのGoogle DuplexやGoogle Assistant、AmazonのAlexa、AppleのSiri、MicrosoftのMicrosoft Translatorなどのように、近年では多くの大企業がAIの自然言語処理に重点を置いてAIアシスタントの開発に力を入れています。AIスピーカーという商品も登場し、これからますますAIアシスタントの分野では競争が激化していくと見込まれています。

画像認識

「画像認識」とは、画像や動画を分析しその中に含まれる文字や人の顔、物、場所といったパターンや特徴を検出する技術です。コンピュータは背景の中から目的となるパターンや特徴を識別し抽出します。人の顔を識別する技術はますます高度になってきており、画像認識の技術を応用する事例も増えてきています。IBM社が開発した画像認識システム「IBM Watson」はディープラーニング(深層学習)を活用して画像の内容を分析し、識別する機能を持っています。IBM Watsonは個別のものや人の顔だけでなく、人の表情や、性別、年齢までも認識することができます。
また、自動車運転の場面においても360度周りの状況を認識し、危険物や歩行者がいれば運転者に知らせるといった技術も開発されており、CMでも近年ではよく見られる、いわゆる「ぶつからない車」も実現されています。
そのほかにも顔認証システムや監視カメラの映像分析などのセキュリティ部門や、文字を認識して翻訳する文字認識部門での活用も進んでいます。

自然言語処理

「自然言語処理」とは歴史的経緯のなかで人間によって形成され、日常的に用いられている言語(自然言語)をコンピュータに処理させる技術のことです。自然言語処理では、まず話し言葉や書き言葉で処理したいテキストを一つ一つの単語に分割します。そして文の構造をはっきりさせて、最終的に文全体の意味を考えます。また、「自然言語処理」には世界中のあらゆることに関する知識が必要になるため、すでにご紹介した「音声認識」や「画像認識」よりも技術的な問題が多くあります。処理の過程の中で「解釈の仕方が一つに絞れない」、「構文や単語の意味が曖昧」、「話し言葉では音声が変化する場合がある」などといった複雑な問題が絡んでくるためです。しかし、そうした壁を乗り越えるべく様々な自然言語処理の応用技術の開発が進められてきました。
自然言語処理の活用例としては、Googleの検索エンジン、AppleのSiri、Google翻訳機能、Microsoft Office Wordなどの大企業の技術が挙げられます。

特化型AIと汎用型AI

特化型AIとは

特化型AIと汎用型AI

「特化型AI」とは個別の分野に特化して作業を行うAIのことを指し、現時点では社会で実用化されているAIは「特化型AI」を指します。囲碁や会話、画像認識などといった専門化された分野においては、「ディープラーニング」などの登場によって、人間のように思考し、人間を上回るほどの機能を備えたAIがすでに開発されています。「特化型AI」は人間が設定した課題を人間が用意したデータの分析・学習によって解決するAIであるため、設定された特定の分野以外の課題を解いたりすることはできません。そのため、人間を打ち負かしたコンピュータ囲碁プログラムAlpha Goも、会話や画像認識といったほかの分野には対応していません。

汎用型AIとは

個別の分野に特化した「特化型AI」の開発も、最終的には何でも機械自身の力で解決する「汎用型AI」の開発を目標にしているといえます。つまり、AI開発の最終目標が「汎用型AI」の開発なのです。「汎用型AI」とは作業を特定の分野に限定されず、様々な分野で人間と同じように考え、自分の能力をうまく応用して、想定されていない問題にも対処できるAIのことを指します。人間が課題を設定しなくても、AIが自ら課題を見つけて自発的かつ自律的に学習を行うという点が「特化型AI」との大きな差です。

このような「人工知能」という言葉が本来想定しているようなまさに理想的な「汎用型AI」の開発にはまだ技術的な課題が多く、実用化には至っていません。「汎用型AI」の実現はAIの知能が人類全体の知能を超越すること、すなわち「シンギュラリティ」を意味します。そのため、「汎用型AI」の研究には懸念の声も上がっています。

強いAIと弱いAIの違いとは?

AIの問題解決能力について「AIも人間と同レベルかそれ以上の知性を持ちうる」という考えと、「AIは単に特定の問題を解決するためだけの機械に過ぎず、本当の意味での知性を持つことなどありえない」という考えの2つが存在します。

「強いAI」は前者に当たり、自意識を持ったり、人間に匹敵するほどの知能を持って問題を解決したりするAIのことを言います。まるで人間のような自意識を持つAIとして小説や映画の世界でしばしば描かれているのがこの「強いAI」です。

一方で「弱いAI」は、自意識を示すこともなければ、人間のような知性を感じさせることもないただのプログラムと考えられます。人間の知能の一部分に代わって仕事をするだけの存在であり、人間の全認知能力を用いるような処理は行いません。

AIの歴史~古代から現代まで~

AI(人工知能)という言葉自体が登場するようになったのは20世紀になってからですが、「人間のように思考する機械」という意味でのAI的発想は古代ギリシア時代から存在していました。ここからはAI(人工知能)の歴史を古代の神話から、AI開発の土台となったコンピュータ開発、そして現代の最先端の研究分野まで、要点をピックアップしてご紹介したいと思います。

古代ギリシア神話に登場するAI?

『イーリアス』の表紙
『イーリアス』の表紙

AI(人工知能)の考え方として古いものはなんと古代ギリシア神話にまで遡ります。紀元前8世紀に作られた『イーリアス』という叙事詩には「人工知能」という言葉ではないものの、一種の「人工生命体」であるという意味でAIの起源ともいえるロボットが登場します。

そこには炎と鍛冶の神ヘーパイストスが人間の少女そっくりに作った黄金のロボットが人間の気持ちを理解し、ヘーパイストスを助ける召使として働いている様子が描写されています。

中世の人造人間「ゴーレム」もAI?

ラビ・レーヴとゴーレム
ラビ・レーヴとゴーレム

チェコ・プラハのユダヤ教指導者・神秘思想家であったイェフダ・レーヴ・ベン・ベザレル(1525~1609)は法律や税制の場面で社会的な問題の解決に尽力した一方で、人造人間ゴーレムの伝説で有名なラビ・レーヴとしても有名です。ゴーレムとはユダヤ教の伝説に出てくる泥人形のことで、自らの力で動くとされています。近年のフィクションやゲームにもしばしば登場するこのゴーレムは、本来は創造主である主人の命令に忠実なロボットを指します。言葉には霊的な言葉が宿るとされていたため、ゴーレムを作る際にも言葉が重要な役割を果たしていたようです。このような「言語錬金術」によるゴーレムの作り方、壊し方を以下に簡単に示します。

  1. 土や泥をこねて人形を作る
  2. 呪文を唱えてemeth(真理)と書かれた護符を人形の額に貼り付ければゴーレムとなって動き出す
  3. 先ほどのemeth(真理)の文字のeの部分を消してmeth(死)とするとゴーレムは死んで元の土や泥に戻る

伝説ではイェフダ・レーヴ・ベン・ベザレルは自宅でゴーレムを飼っていていろいろな仕事をさせていたといわれています。ただしこうしたゴーレムは扱ううえで守らなければいけないルールを破ると狂暴化し人間に危害を加えることもあったようです。人間に似せて生命を再現しようとする試みであること、そして扱い方を間違えると人間にとって脅威になりうることなど、現在のAIに通じるところがありますね。

AIの理論的土台

ルネ・デカルト
ルネ・デカルト

17世紀には近世哲学・合理主義哲学の祖であるルネ・デカルト(1596~1650)や、デカルトと共に機械論的な世界観の先駆的哲学者とされるトマス・ホッブズ(1588~1679)、大陸合理主義の基礎を築いたゴットフリート・ライプニッツ(1646~1716)といった哲学者・数学者たちが論理的な思考を体系化しようと試みました。

デカルトは自身の機械論的世界観で、力学的な法則が物体の運動を決めているとし、それまでの感覚的・主観的な世界観とは異なる世界観を打ち出しました。

また、ライプニッツは数学における二進法・微積分法の他に、「形式言語」の考え方も考案しました。彼は「形式言語」に意味や文法を形式的に与えれば、あらゆる推論は幾何学や代数学と同じように機械的な作業に置き換えることができると考えました。

ゴットフリート・ライプニッツ
ゴットフリート・ライプニッツ

こうした考え方がのちにAI(人工知能)を考える上での論理的土台となったのです。

仮想機械「チューリングマシン」と世界初のコンピュータ「ENIAC」

プログラミングされる電子計算機ENIAC
プログラミングされる電子計算機ENIAC

チューリングマシン」とは、イギリスの数学者であるアラン・チューリング(1912~1954)が1936年に発表した論文の中で提示された、理論上の仮想機械のことです。このチューリングマシンは記号操作を抽象化し、計算機について数学的に考えるために考案されたものです。彼はこの仮想の計算機に問題のデータを入力した際に、出力データが得られるのであれば、その問題にはアルゴリズムが存在することが判定できるとしました。また、コンピュータのアルゴリズムで実行可能な関数と計算可能な関数を同じものとして扱おうとする考えを「チャーチ=チューリングのテーゼ」といいます。

AI研究に欠かせない存在である電子計算機で世界初といわれているものが、1946年にアメリカで開発された「ENIAC」だといわれています。ENIACは第二次世界大戦中に砲撃の際の弾道を計算するために軍事目的で開発が始められましたが、完成時にはすでに戦争が終結しており、戦後の水爆開発にも利用されました。ENIAC以前にも「Colossus」や「ABC」などの電子計算機は一応存在しましたが、それらは出力装置の安定性が悪かったり、軍事上の機密情報として扱われていたりしたために、ENIACが世界初のコンピュータとして戦後多くの人々に知られることになりました。

ENIACに搭載されている真空管
ENIACに搭載されている真空管

ENIACは真空管を17468本使用搭載し重量は30トン余りという非常に大きな計算機でした。真空管を使用する従来の計算機では真空管の故障が深刻な問題となっており、およそ6分に1本の真空管が故障しそれを修理するのに30分程の時間を要しました。そのため真空管を使用した電子計算機の利用は非現実的だとする見方も多くありました。それに対してENIACは真空管の故障を1週間に数本にまで抑え、電子計算機の安定性を著しく向上させたのです。こうした電子計算機の分野での功績が後のコンピュータ産業に大きな影響を与えることになりました。

AI(Artificial Intelligence)の"誕生"ダートマス会議


"AI(Artificial Intelligence)"の生みの親 ジョン・マッカーシー

「人工知能」にあたるAI(Artificial Intelligence)という言葉は1956年に開催された通称「ダートマス会議」(The Dartmouth Summer Research Project on Artificial Intelligence)でダートマス大学のジョン・マッカーシーによって初めて提案されました。彼はコンピュータ科学者であるマービン・ミンスキー、IBM701を設計した計算機学者ネイサン・ロチェスター、情報理論の考案者クロード・シャノンらとともにこの会議を企画し、人工知能に関連する分野の研究者に対する提案書を作成しました。その提案書には以下のように記されています。

The study is to proceed on the basis of the conjecture that every aspect of learning or any other feature of intelligence can in principle be so precisely described that a machine can be made to simulate it. An attempt will be made to find how to make machines use language, form abstractions and concepts, solve kinds of problems now reserved for humans, and improve themselves. We think that a significant advance can be made in one or more of these problems if a carefully selected group of scientists work on it together for a summer.

A PROPOSAL FOR THE DARTMOUTH SUMMER RESEARCH PROJECT ON ARTIFICIAL INTELLIGENCE」より

「この(人工知能の)研究は、学習のあらゆる側面またはその他の知能の特徴を、機械にそれをシミュレーションさせることができるように正確に説明することが原則として可能である、という条件のもとに定めて進められる。機械に言語を使わせ、抽象的なものや概念的なものを形成させ、現在人間に残された様々な問題を解かせ、そして機械自身を向上させる方法を見出すための試みがなされることだろう。私たちはもしこれらの注意深く選定された科学者たちが、ひと夏このことについて共同で取り組めば、これらの問題のいくつかで大幅な進展を得ることができると考えている。」

このようにダートマス会議では人間の学習や知能を機械に再現させるという、AI(人工知能)研究の目標が示されました。

初期の自然言語処理プログラムELIZA(イライザ)

1956年のダートマス会議を機にAIの分野で新たな発見が次々とされ、1960年代にかけて大きな進展が見られました。特に自然言語の分野では会話をしたり数学の問題を解いたりするプログラムがいくつも開発され多くの人々を驚かせました。その一例としてよく知られているのが、1966年にアメリカ人のジョセフ・ワイゼンバウムによって開発された自然言語処理プログラム、ELIZA(イライザ)です。ELIZA(イライザ)は音声ではなくスクリプトによって人間と対話することができる対話型の自然言語処理プログラムです。

ELIZAは人間のような知識や感情といったものをほとんど持っていませんでしたが、人間が話した言葉の構文を解析してその中のキーワードを定型文に組み込んで返答することで、うまくいけば驚くほど人間的なやり取りをすることができました。このような簡単なパターンマッチ技法を使った会話をするプログラムも、パーソナルコンピュータやインターネットが普及していなかった当時は人々に大きな衝撃として受け取られました。

AI開発に立ちはだかる"課題"と2度の資金難

AI開発の黄金期ともいわれる1950年代や1960年代には「あと20年もあれば人間ができることはすべてAIでできるようになるだろう」や「あと10年でAIがチェスの世界チャンピオンに勝つだろう」というような予測が科学者たちによってなされていましたが、実際には1970年代、1980年代にはAI開発の分野でそこまでの成果は得られませんでした。AI開発を進める上で、研究開始当初は想定していなかった問題が浮き彫りになったからです。

技術上の問題としては、コンピュータの性能がAI開発に耐えうる程のレベルに達していなかったことが挙げられます。当時のコンピュータは処理能力や容量が不足していたため、高度な処理を要するAI開発では全く追いつけない状態でした。現在普及しているコンピュータソフトは当時のコンピュータの数万倍、数百万倍の処理スピードと容量を持つまでに成長しましたが、コンピュータが現在のレベルに到達するのには当時の科学者が想定していたよりも長い時間がかかってしまったようです。

また、AIの研究者たちはこうした技術面の課題に直面したことが原因で1970年代後半と1980年代後半~1990年代初めにかけて2度の資金難を経験することになりました。例えばアメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)は1960年代にDARPA(アメリカ国防省・国防高等研究計画局)から300万ドル余りの資金を提供されていましたが、研究プロジェクトでの成果が出ない状態が続いたため、1970年代にはAI研究に関する資金提供を受けることができなくなりました。1980年代後半~1990年代初めにかけても、AI開発におけるコストの問題や一般用パーソナルコンピュータの性能の著しい向上とその普及によってAI開発に対する注目度は低くなり、市場も縮小しました。

こうした二度の資金難のたびにAI研究は人々の失望を買い、軽視されることになりました。AIの研究者たちがさまざまな課題を克服し、再び莫大な資金提供を受けるための大きな成果が出始めるのは2000年代になってからです。

ディープラーニング(深層学習)の発明と現代のAI

ジェフリー・ヒントン
ジェフリー・ヒントン

AI開発におけるもっとも大きな成果の一つと言われるのが、「第3次AIブーム」を引き起こすことになったディープラーニング(深層学習)の発明です。ニューラルネットワーク(人間や動物の脳の神経回路をモデルとして、問題解決をするように設計されたアルゴリズム)の研究をしていたイギリス人のジェフリー・ヒントンが、2006年にオートエンコーダを利用したディープラーニングの手法を提案し、大きな注目を集めました。オートエンコーダとは、複雑な処理を行うために多層構造化されたニューラルネットワークの次元を削除して、情報量を圧縮するための技術です。これによって機械は自らの力で特徴となる情報を抽出、圧縮し、必要な時は復元して出力することができるようになりました。ディープラーニングの登場以後、専門化された各分野で様々なブレイクスルーが見られるようになりました。

画像認識の分野においては、2012年にGoogle社がYouTubeの動画を1週間見続けたコンピュータが猫の特徴を自ら学習し、認識できるようになったと発表し世界各国の注目を集めました。

Google社が発表した猫の画像
Google社が発表した猫の画像

また2016年にはGoogle社の子会社である「DeepMind」が開発した囲碁対戦専用のAI「Alpha Go」が世界最高峰のプロ囲碁棋士であるイ・セドルを、翌年には世界最強の棋士カ・ケツを破り「囲碁の神」とも呼ばれました。専門化された狭い範囲の分野とは言え、AIの能力が人間を凌駕するまでに成長したことは、多くの人々にとってショッキングな出来事でした。

さらに日本国立情報学研究所では、2021年の東京大学入学試験合格を目標とした人工知能「東ロボくん」の開発が行われました。東ロボくんはセンター試験においては受験者の多くを上回り、MARCHや関関同立クラスや一部の国公立大学も合格圏内に入るほどにまで成績を伸ばすことに成功しました。しかし人間を上回る圧倒的な知識量を誇る東ロボくんでも、文章を読み解く読解力が著しく低く、これ以上良い成績を上げることはできないと判断されました。そして結局2016年11月に東京大学合格を諦めたことが発表されました。このプロジェクトを通してAI開発において機械に読解力を持たせることの難しさが明らかになり、人間の学習や思考に関する考え方を再検討する必要性も浮き彫りになりました。また、東ロボくん開発のプロジェクトリーダーである新井紀子氏は、読解力をほとんど持たない東ロボくんよりも読解力が低い高校生の数が少なくないことに危機感を覚え、日本における教育、学習の在り方に問題提起をしています。

ディープラーニングの登場以来AI開発の分野はますます加速する一方です。今後ディープラーニングに匹敵する技術的なブレイクスルーが起きれば、AIが知識と知能の両方で人間を上回る技術的特異点「シンギュラリティ」が訪れるのもそう遠くはないかもしれません。

おわりに

今回はAI(人工知能)に関する基本的な説明とその歴史をご紹介いたしました。AIそのものやディープラーニング(深層学習)について知りたい際には、その誕生を支えた理論的な土台やコンピュータの開発の歴史など、時代の流れを知るとさらに理解を深めることができます。AIの分野では日々技術が進歩しており、これからも目が離せません。近年ではAIをはじめ、その他のITに関する事柄をスクールで学びたいという方が増えてきています。
インターネット・アカデミーではAIについてはもちろん、その他ITに関する様々な知識やノウハウを提供していますので、個人で学びたいと考えている方はスクールの無料カウンセリングにぜひご参加ください。

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