DoS/DDoS攻撃からWebサイトを守るには?基礎知識と対策ガイド
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- 2025/07/22

近年は「DDoS攻撃」というサイバー攻撃が頻発しており、被害を受ける企業も増加しています。今回はDDoS攻撃の基本からDoS攻撃との違い、具体的な対策手法までをわかりやすく解説します。

DDoS攻撃は以前から問題となっているサイバー攻撃の一種ですが、近年その攻撃件数は増加傾向にあり、攻撃手法も巧妙化しています。そのため、対策の知識を備えることが必要です。
目次
DDoS攻撃とは?わかりやすく解説
CDN(Contents Delivery Network:コンテンツ配信ネットワーク)やインターネットセキュリティサービスを展開するCloudflareによると、同社は2025年第1四半期に2,050万件のDDoS攻撃を防御しました。この件数は、前年比358%増、前四半期比198%増に相当します。
日本では2024年末から2025年始にかけて航空機関や金融機関、大手キャリア企業などがDDoS攻撃を受けたというニュースが相次ぎ、大きな波紋を呼びました。
国内外で大きな社会課題となっているDDoS攻撃とは、一体どんなものなのでしょうか?
DDoS攻撃の読み方と定義
DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は「ディードス攻撃」と読みます。日本語では「分散型サービス拒否攻撃」と訳されることもあります。
DDoS攻撃は、複数のコンピュータやネットワーク機器から、標的となるサーバーやネットワークに対して大量のアクセスやデータを送りつけるサイバー攻撃の一種です。
大量のリクエストによってサーバーが処理能力を超過し、サービス停止や機能不全に陥らせることを目的としています。
DDoS攻撃の仕組み
攻撃者はまず、マルウェアに感染させた多数のコンピュータ(ボットネット)を構築します。
これらのボットネットが一斉に標的サーバーへリクエストを送りつけることで、サーバーは処理能力を超えてしまい、結果としてダウンしたり、応答が極端に遅くなったりします。
正当なユーザーからのアクセスも遮断され、サービスが利用できなくなるというのがDDoS攻撃の仕組みです。

ただし、必ずしも「システムダウン=DDoS攻撃」と結論付けられるとは限らないため、システムダウンがあった場合はDDoS攻撃なのか、システムのエラーなのか、それ以外かなど迅速に原因を確認したうえで、対応方法を考える必要があります。
DDoS攻撃とDoS攻撃の違いとは?混同しやすいポイントを整理
DDoS攻撃とDoS攻撃は、どちらもサービスを妨害するサイバー攻撃の一種ですが、それぞれ特徴が異なります。混同しがちなこの2つの攻撃の違いについて、整理していきます。
DoS攻撃の定義と基本的な特徴
DoS攻撃は「Denial of Service attack(サービス拒否攻撃)」の略で、「ドス攻撃」と読みます。
単独のコンピュータから攻撃を行うサイバー攻撃の一種で、DDoS攻撃と同じくサーバーに過剰な負荷をかけ、応答を停止させたり、機能不全に陥らせることが目的です。Webサイトの閲覧やメールの送受信など、正常なサービス利用を妨害します。
DDoS攻撃とDoS攻撃の違いは「単独か分散か」
DDoS攻撃とDoS攻撃の違いは「単独か分散か」という点です。
DDoS攻撃は、複数のコンピュータ(ボットネット)を悪用し、分散して標的のサーバーへ攻撃を仕掛けます。多数の攻撃元から同時に大量のリクエストが送られるため、サーバーは処理能力を超えてしまい、ダウンしたり応答が遅延したりします。
攻撃元が分散しているため、特定や防御が非常に困難である点が特徴です。
一方、DoS攻撃は、単一のコンピュータから標的のサーバーに対して大量のアクセスやデータを送りつける攻撃です。攻撃元は一つであるため、比較的特定しやすく、防御もDDoS攻撃に比べて容易であるとされています。

つまり、DDoS攻撃は「多方面からの同時攻撃型」であるのに対し、DoS攻撃が「一点集中型」であると言えます。
DDoS攻撃の主な種類とその特徴
一口にDDoS攻撃といっても、その手法にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴や影響を持ちます。ここでは代表的なDDoS攻撃のタイプと、その具体的な仕組みについて解説します。
ボリューム型攻撃
ボリューム型攻撃(Volume-Based Attack)は、大量のトラフィックを送り込むことでネットワーク帯域を圧迫し、サービスを妨害するDDoS攻撃の一種です。
この攻撃の主な目的は、標的のサーバーやネットワークが処理できるデータ量を超過させ、通信を麻痺させることです。
代表的な手法としては「UDPフラッド」「ICMPフラッド」などがあります。
ボリューム型攻撃の代表的な手法 | 攻撃の特徴 |
---|---|
UDPフラッド | 大量のUDPパケットを標的サーバーに送りつける攻撃。サーバーが応答処理に追いつかなくなり、サービス停止につながる。 |
ICMPフラッド | 大量のICMPパケットを送信し、ネットワーク帯域を圧迫する攻撃。 |

これらの攻撃は、単純ながらも効果が高く、DDoS攻撃の中でもよく用いられる手法です。
プロトコル攻撃
プロトコル攻撃(Protocol Attack)は、ネットワークプロトコルの脆弱性を悪用して標的のサーバーやネットワークに負荷をかけるという攻撃です。
TCPやIPなどの通信プロトコルの仕組みを悪用し、サーバーのリソースを枯渇させることを目的とします。
代表的な手法としては、SYNフラッドやPing of Deathなどがあげられます。
プロトコル攻撃の代表的な手法 | 攻撃の特徴 |
---|---|
SYNフラッド | TCPの接続要求(SYNパケット)を大量に送りつけ、サーバーが接続処理に追いつかなくなるように仕向ける攻撃。 |
Ping of Death | 大きなサイズのパケットを送りつけることで、標的システムに過剰な負荷をかけ、システムダウンを引き起こす攻撃。 |
これらのプロトコル攻撃は、ネットワークの仕組みに深く関わるため、防御が難しい場合があります。
アプリケーション層攻撃(Layer 7 Attack)
アプリケーション層攻撃(Layer 7 Attack)は、OSI参照モデルの第7層であるアプリケーション層を標的とするDDoS攻撃です。
HTTP、DNSなどの特定のアプリケーションプロトコルの脆弱性を悪用し、サーバーに過剰な負荷をかけることを目的とします。
ボリューム型攻撃やプロトコル攻撃とは異なり、大量のトラフィックを送り込むのではなく、アプリケーションの機能を悪用して攻撃を行います。
例えば、Webサーバーに対して大量のHTTPリクエストを送りつけたり、特定のリソースを繰り返し要求したりすることで、サーバーのリソースを浪費させ、サービス停止を引き起こします。
代表的な手法としては、HTTPフラッドやSlowlorisなどがあります。
アプリケーション層攻撃の代表的な手法 | 攻撃の特徴 |
---|---|
HTTPフラッド | 大量のHTTP GETリクエストやPOSTリクエストを送りつける攻撃。サーバー、Web サイト、Webアプリケーションに負荷をかけ、処理速度を低下させたりクラッシュさせる。 |
Slowloris | HTTPリクエストを少しずつ送り続けることで、サーバーの接続を長時間占有し、他のリクエストを処理できなくする攻撃。 |
通常のトラフィックと区別がつきにくいため、検知や防御が難しいというのもアプリケーション層攻撃の特徴です。
DDoS攻撃はなぜ起こるのか?背景と動機
DDoS攻撃はなぜ起こるのでしょうか?その背景や、攻撃者側の動機についてみていきましょう。
背景1.犯罪グループによる金銭目的の犯行
DDoS攻撃のケースとしては、金銭を目的としたサイバー犯罪グループによって引き起こされるパターンがあげられます。
彼らは、企業や組織に対してDDoS攻撃を仕掛け、サービス停止や業務妨害を引き起こします。そして、攻撃を止める代わりに金銭を要求する「身代金」を要求します。
DDoS攻撃は、比較的容易に実行できる上に匿名性が高いため、犯罪グループにとって魅力的な手段となりやすいと言えるでしょう。
背景2.政治的・社会的主張(ハクティビズム)
DDoS攻撃は、単なる金銭目的だけでなく、政治的・社会的なメッセージを伝える手段としても利用されることがあります。
このような動機で行われる攻撃は、ハッカー(hacker)と活動家(activist)を組み合わせた「ハクティビズム(Hacktivism)」と呼ばれます。
ハクティビストたちは、政府機関、企業、宗教団体、報道機関などを攻撃対象とし、検閲への抗議、人権擁護、環境問題への訴え、政治的な意思表明などを目的に攻撃を実行します。
これにより注目を集め、世論やメディアの関心を引き起こすことを狙っています。
背景3.競合企業間の妨害行為や愉快犯
DDoS攻撃は、競合企業への妨害行為として使われることもあります。セールや新サービス開始などの重要なタイミングで相手企業のサイトをダウンさせ、業績や評判にダメージを与えることが目的です。
また、明確な利益を狙わず、単に面白半分で攻撃を仕掛ける愉快犯も存在します。こうした攻撃は予測が難しく、防御が困難な場合があります。
DDoS攻撃への具体的な対策方法とは?
DDoS攻撃は日々巧妙化しており、被害を防ぐには的確な対策が不可欠です。それでは、DDoS攻撃への対策方法を具体的に解説します。
対策1.Firewall、CDN、WAFの活用
DDoS攻撃への基本的な防御策として「Firewall」「CDN」「WAF(Web Application Firewall)」の導入があげられます。
DDoS対策システム | システムの特徴 |
---|---|
Firewall | 不正アクセスやサイバー攻撃から、内部ネットワークを防御するセキュリティシステム |
CDN | ユーザーに最も近いサーバーからコンテンツを配信し、表示速度と安定性を向上させる仕組み |
WAF | Webアプリケーションへの不正アクセスや攻撃を検知・防御するためのセキュリティ対策ツール |
Firewallは、不審なIPアドレスや異常な通信を検出し遮断することで、ネットワーク層での防御を実現します。CDNは、世界中に分散したサーバーがトラフィックを吸収・分散するため、攻撃が一箇所に集中するのを防ぎ、Webサイトの可用性を保つことが可能です。
WAFはアプリケーション層を保護する役割を持ち、不正なリクエストを検知してブロックします。

複数のセキュリティシステムを組み合わせて運用することで、攻撃に対する耐性を高められるんだね!
対策2.クラウド型DDoS対策サービスの活用
大規模かつ複雑化するDDoS攻撃に対してはCloudflare、AWS Shield、Akamaiなどクラウド型のDDoS対策サービスを利用することが効果的です。
こうしたクラウドサービスは、インターネット上に分散配置された専用インフラを活用し、攻撃トラフィックをクラウド側で吸収・無害化したうえで、正常な通信だけを企業のサーバーに届けます。
オンプレミスの機器では対処しきれない大規模攻撃や突発的なトラフィックの急増にも柔軟に対応できる点が大きな強みです。また、導入も比較的容易で、専門知識がなくても設定・運用できるサービスも多く提供されています。
対策3.セキュリティに関する知識の普及
DDoS攻撃への対策は技術的な防御だけでなく、社内全体のセキュリティ意識の向上も不可欠です。
運用担当者が、DDoS攻撃の手口や兆候、初期対応の方法を理解していれば、被害の拡大を防ぐ迅速な対応が可能になります。
また、システム管理者だけでなく、経営層や一般社員に向けた定期的なセキュリティ教育や訓練も重要です。

外部の専門家による研修を通じて、常に変化する脅威に対応できる体制づくりを進めることが、長期的なリスク軽減につながります。
おわりに
DDoS攻撃は、ますます巧妙化し、企業や組織にとって深刻な脅威となっています。今回紹介したように、適切な防御策を講じることで、DDoS攻撃に対する耐性を高めることができます。
DDoS攻撃の対策では、セキュリティシステムの導入といった単なる技術的対策だけでなく、社内全体でのセキュリティ意識の向上も非常に重要です。
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