インクルーシブデザインとは?アクセシブル/ユニバーサルデザインとの違いや手法、具体例をご紹介!
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- 2024/02/18
多様性の時代の中では、マジョリティだけでなくマイノリティグループにも配慮することが重視されてきています。しかし、配慮するといっても対象の幅が広いために実現が難しい場合も多々あります。そのような時には、インクルーシブデザインというデザイン手法が役立ちます。
「包括的なデザイン」という意味の言葉ですね。どんなものなのか、一緒に見ていきましょう。
目次
インクルーシブデザインとは
インクルーシブデザイン(Inclusive Design)とは、今までデザインプロセスの中で排除されがちだった人々と共にサービスをデザインしていく手法です。
「インクルーシブ」には「すべてを含んだ、包括的な」という意味があり、インクルーシブデザインは、今までの時代の中で様々なサービスの対象とされなかった人々もデザインの上流工程から巻き込んでいくという意味を持っています。今までデザインプロセスに携わることができなかった人々による視点を取り込むことで、新たな価値を創造できる手法とされています。
アクセシビリティと混同してしまいがちですが、アクセシビリティとは、どんな利用者でも情報やサービスを利用できること、またはその到達度のことです。つまり、アクセシビリティはデザインの性質をあらわし、インクルーシブデザインはそれを実現するための手法・手段のことを指します。
アクセシブルデザイン・ユニバーサルデザインとの違い
インクルーシブデザインは、アクセシブルデザイン(Accessible Design)やユニバーサルデザイン(Universal Design)と混同してしまいがちですが、それぞれ重視するポイントが異なります。
インクルーシブデザイン | アクセシブルデザイン | ユニバーサルデザイン | |
---|---|---|---|
目指すもの | 特定の人々の課題を解決した、包括的なデザイン | より多くの人が利用できるデザイン | すべての人を対象にした、汎用的なデザイン |
デザインする方法 | デザイナーと、デザインプロセスから排除されてきた人々が協同し、製品やサービスをデザインする | 不便な製品やサービスに改造を施して、デザイナーが使いやすくする | 元の製品などに改造は施さず、デザイナーが最大限配慮することで誰もが利用できるようにする |
この表から、アクセシブルデザインとユニバーサルデザインは製品やサービスといったアウトプットに焦点を当てており、インクルーシブデザインはプロセスに焦点を当てているという点が大きな違いであるとわかります。
またユニバーサルデザインには、汎用性が高い分、高齢者や障がい者、外国人など、それぞれの立場の人への配慮が十分ではないという欠点があります。これはつまり、誰でも利用できる反面、誰もが利用したいと思えるデザインではない、ということになります。この欠点を克服するためのデザインがインクルーシブデザインです。
他にも、アクセシブルデザインに似た言葉に「アクセシビリティ」がありますが、アクセシビリティとは、どんな利用者でも情報やサービスを利用できること、またはその到達度のことです。つまり、アクセシビリティはデザインの性質をあらわし、インクルーシブデザインはそれを実現するための手法・手段のことを指します。
インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの例:絆創膏
インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違いを理解する上で分かりやすい例として、肌の色と絆創膏が挙げられます。インクルーシブデザインを重視した人は、多様な肌の色と同じ色の、カラーバリエーションが豊富な絆創膏がを開発しました。一方ユニバーサルデザインを重視した人は、どんな肌の色の人でも利用できるよう透明な絆創膏を開発しました。
インクルーシブデザインの取り組み方
インクルーシブデザインに取り組むには、ペルソナとゴールを設定し、ペルソナに当てはまるメンバーと共に試行錯誤することが大切です。
ペルソナとゴールの設定
サービスの対象となるペルソナについて、以下のような項目を設定します。
- 年齢、性別、性格、職業
- 生活パターン
- 普段利用しているサービス
- どのような障害・問題に悩んでいるか
このペルソナに基づき、ペルソナが直面している障害・問題に対するゴールを決定します。
ペルソナに合致するメンバーと協働
除外されてきた人々と共に、改善・改良を重ねることで、インクルーシブデザインは完成します。
インクルーシブデザインの例の一つとして、シチズン時計による視覚障がい者のための腕時計「AC2200-55E」をみてみましょう。これはタイにある複合視覚障がい者学校の教員、生徒たちを企画・開発の段階から巻き込んで、視覚障がい者でも盤面を触ることで時刻を確認できる腕時計として開発されたものです。このように、実際に使用する人を巻き込んでデザインしていくことで、今まで排除されがちだった人々にとって有用性の高いサービスを生み出せます。
Webサイトにインクルーシブデザインを反映させるには
ここからは、実際にWebサイトにインクルーシブデザインを反映させる方法を紹介します!
ペルソナの設定
Webサイトは多様な人がアクセスし利用する場ですので、サイトのターゲット層に合わせつつ、複数のペルソナを設定する必要があります。
例えば日本国内の学生寮を紹介するサイトであれば、以下のようなペルソナを設定する必要があります。
ペルソナ1
- 日本人女性
- 身体障害がい者、車椅子生活
- SNSの口コミから情報収集している
ペルソナ2
- スペイン人留学生
- 海外在住、日本での居住経験無し
- 日本語レベル初級
ゴールの設定
次に、これらのペルソナが抱えているであろう様々な問題をあぶり出し、ゴールを設定します。上記のペルソナをもとに課題を考えると、以下の4つがあげられます。
- 身体障がいがあっても暮らせる寮を見つける必要がある
- 信頼性の高い情報が得られない
- 地理条件が判断できない
- 言語の壁がある
ここから、以下の4つがゴールとして設定できます。
- 身体障がい者が暮らしやすい寮を絞って検索できる機能をつけること
- 信頼性の高い情報で構成すること
- 言語が翻訳されること
- 地理条件と照らし合わせて検索できること
ペルソナに合致するメンバーと協働
次に、上記のペルソナに当てはまる人物をデザインチームのメンバーとして採用し、デザインを作成・評価してもらいます。Webサイトにどのような機能が欲しいか、反対にどのような機能は不要か、どのような色彩であれば視覚的にわかりやすいか、どこに何を配置すべきかなど、様々な項目に対して、立場の違う人たちを含めたメンバーで懸念をつぶしていくことで、インクルーシブデザインは完成します。
まとめ
今回の記事ではインクルーシブデザインについてご紹介しました。インクルーシブデザインを実践することで、従来よりも多様でアクセシビリティの高いサービスを作り上げられるようになります。
多様化が進む中で、インクルーシブデザインはデザイナーにとって必須となっていくでしょう。これはどのサービスにも共通して言えることであり、今回フォーカスしたWebデザインにも深くかかわってきます。
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